1.直前の練習
(1)自分の波を知ろう
普段は、毎日少しの時間でも練習をしましょう。そしてその中で、調子のよいときと悪いときの波がいつごろ来るかつかんでおき、受験当日には調子のよい状態で臨めるように合わせましょう。もちろん、体調も同じように。
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(2)本番と同じ気持ちで練習を
練習時でも、たまに本番と同じような精神状態で書いてみるのも一法です。例えば、本番になるとシャープを強く握り締めて書く癖のある人はそのようにして書いてみたり、緊張してアガッてしまう人は例えば他人に見られながら速記してみたり、また思い切り崩れてしまう人はわざと崩して書いてみたりしてみましょう。普段の速記文字で反訳ができても本番の速記文字は反訳できないというのでは困りますので、本番に近い状態に身を置いておいて、そういう速記文字になれておくことも大切です。
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(3)反訳は必ず行おう
普段の練習で反訳を行っていない人は、必ず反訳練習をしておきましょう。反読だけというのも、読み間違っている可能性もありますし、正しい用字の表記をしているかどうかもわかりません。また、反訳をすれば自分のミスの性格を知ることもできます。
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(4)余裕があれば受験級より速い速度での練習を
練習では合格圏内にあっても本番になると極度に緊張して失敗する人、あるいは受験級に余裕がある人は、受験級より少し速い速度で練習してみましょう。そういう練習をすることによって受験級の速度を遅く感じたり、その速度に自信が持つこともできます。
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(5)調子が悪いときは書き殴ろう
どうも手が動かず調子が悪いときは、抜けてもお構いなしに、休憩を挟まず1〜2時間ぐらいぶっ通しで書いてみましょう。すると手が軽くなり、本番の5分、10分が短く感じられたりもします。1〜2時間というと長いように思われますが、実務ではそういうことはしょっちゅうです。
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(6)省略文字は余り取り入れないように
試験直前に省略文字を取り入れ、完全消化されていない状態のとき、本番でたまたまその言葉に出くわすと、省略文字はもちろん、今まで使っていた文字すらも書けず、シャープがとまってしまうことがよくあります。そういうことのないよう、省略文字の練習よりも、それまで使っていた速記文字に重点を置き、それを素早く書けるようにしておきましょう。とにかく、中途半端な取り入れ方は絶対にいけません。
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(7)試験問題を予想しよう
日ごろより新聞・雑誌等をよく読み、検定試験に出そうな話題、言葉がないか目を光らせておきましょう。知らない言葉に出会うと、シャープがとまったり聞き間違ったり、また反訳の段階で読めないこともあります。そういう言葉を速記文字化すると同時に、用語、用字についても調べておきましょう。
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(8)本番前日は練習より睡眠をたっぷりとろう
本番前日に一生懸命練習しても、すぐに効果は出ません。落胆するよりも、睡眠時間を十分とって頭がすっきりした状態で臨めるようにしておきましょう。また、トイレの近い人は、前日より水分の摂取量を控えておきましょう。
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(9)場合により受験級をワンランク落とそう
余り調子が悪いときは、思い切ってワンランク下の級を受験してみましょう。すばらしい成績をおさめると文部科学省や日本速記協会から表彰されますし、それを弾みに次回は本来の級を受験するとよい結果を生むことがあります。
なお、当日、下級への受検変更は可能ですが、上級への変更はできません。また受験級の変更は、一応「空席があるときに限り認められることがある」ということになっています。
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2.当日の持ち物点検
(1)原文帳
書道半紙や和紙などを原文帳にしている人は、1枚1枚、汚れや傷がないか事前にチェックしておきましょう。20枚ごとに挟まれている水色の細長い紙も、忘れずに取り除いておきましょう。
また、原文帳は、練習用・空読み用・本番用を考えて、少し多目に持っていきましょう。
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(2)シャープ
芯が短くなっていないか、点検しておきましょう。新しい芯に交換したときは、芯の先を丸くするために少し書き殴りしておきましょう。
また、万一に備え、シャープは3本ぐらい用意し、さらに速記用とは別に反訳用のシャープも持っていきましょう。
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(3)受験票
一番大事な受験票は、絶対に忘れないようにしましょう。当日申し込みをされる人は、受験料と写真(1〜3級の受験者)も必要です。
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(4)その他の持ち物
消しゴムも、忘れないようにしましょう。4〜6級を受験される方は辞書を見ることができるので、ぜひ日本速記協会発行の「標準用字用例辞典」を持っていきましょう。
また、本番直前まで練習をしたい人は、問題文や再生機等も持っていくとよいでしょう。
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3.当日の注意・点検等
(1)服装に注意をしよう
特に寒い11月の検定試験では、服装にも注意しましょう。試験場によっては暖房のきいていない会場もあります。余り着込み過ぎると、手、腕、肩が動きにくくなります。また、コートなどは、着ているときと脱いだときの身に感じる寒さに差があるので気をつけましょう。薄くても温かい下着を身につけて、厚手の服は着ないようにするのが得策です。さらに、手がかじかむときは使い捨てカイロを用意しておくと重宝します。
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(2)時間に余裕を持とう
電車・バス等を使って会場へ行く場合は、乗りかえ時間、最寄りの駅・バス停から会場までの時間、また食事時間等を考慮し、余裕を持って試験場に向かうようにしましょう。
特に暑い8月の検定試験では、急いで会場へ向かったため、速記している最中に顔から汗が噴き出し、原文帳にポタリなんというようなことのないようにしたいものです。
なお、万一電車が事故のため遅れそうなときは、一度会場へ連絡してみましょう。
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(3)机を点検しよう
試験会場によっては、机が高かったり低かったりして速記しにくいことがあります。特に机が高いと書きにくいので、あらかじめその辺の事情がわかっていれば座蒲団などを用意しましょう。
また、机がガタガタする場合は、浮き上がる机の脚の下に、原文帳に使っている書道半紙などを挟み込んで固定しましょう。
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4.本番での速記
(1)原文帳に余白をつくろう
速記文字は、原文帳1ページに3行ぐらいとし、ゆったり、伸び伸びと書きましょう。また、原文帳の特に右端は、余白を十分あけておきましょう。右端に余裕がないと、省略文字「ありますけれども」が「あるけれども」になったりします。また、上段文字・下段文字を使用している人は、上端・下端もあけておきましょう。
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(2)ゆっくり聞こう
朗読は、聞き方により速く聞こえたり、ゆっくり聞こえたりするものです。何が何でも速度におくれないようにと思い、焦りながらペンを握り締めてガツガツ書くと余計に速く聞こえますが、心に落ちつかせ、少しおくれぎみに書けば、意外とゆっくり聞こえるものです。また、肩の力を抜いて、ペンを軽く持つようにしましょう。
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(3)速記文字は大きく書こう
本番では、少し大きい字で書きましょう。小さい字は速く書けそうな気がしますが、短い線というのは神経が要りますので、ガチガチといった感じで書くことになります。大きい字で書くと心もおおらかになり、伸び伸びと書けますし、心も落ちついてきます。また、大きく書いていると、少しぐらい字の長さが狂っていても何とか読めますし、反訳の際における見落としも少なくなります。
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(4)聞きだめはし過ぎないようにしよう
聞きだめというのは、朗読よりおくれて速記文字を書くた方法で、上達すればするほど聞きだめする字数が多くなります。速記するときは、おくれてもおくれても食らいついていく姿勢が大事ですが、また逆に、ミスの数を減らすためにも、限界が来る前に割り切って抜かすテクニックも必要です。
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(5)抜かす言葉は熟語等にしよう
検定試験での採点は、ミスの内容に関係なく、字数によって計算します。ですから、抜かすのなら、音数が多く字数の少ない熟語等の単語にしましょう。そして、余り意味のない「ということでございます」、「そういうようなことから」、「につきましては」といった字数の多い言葉は、抜かさないようにしましょう。また、抜かした後は、頭の切り換えが必要です。
なお、これはあくまでも検定対策用です。実務では、逆に意味のない言葉は抜かしても、大事な言葉だけは書きておきます。
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(6)訂正するときは下に書こう
聞き間違い、書き間違いをして2度3度と書き直したときは、間違った速記文字と書き直した速記文字が見分けできるようにしておきましょう。間違った速記文字の横に訂正したり、上に重ねて訂正すると、反訳の際、どれが書き直した速記文字かわからなくなってしまうので、必ず間違った速記文字の下に訂正しましょう。
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(7)要注意箇所に印を入れよう
速記するとき、少し余裕があれば、反訳の段階で読み間違うおそれがあるなと思われる箇所、また書き間違ったものの書き直す余裕がなかった箇所、さらに読みにくい外来語等に、何らかの方法で印を入れておきましょう。そして、朗読し終わると、すぐにその箇所を探し出し、正しく書き直したり反訳したりしておきましょう。
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(8)何度も出てくる言葉は省略しよう
何回も出てくる書きにくい言葉は、毎回正しく書く必要はありません。2回目以降は1音目だけを書いて傍線を引っ張る等、後で自分にわかるようにしておきましょう。
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(9)復唱しながら速記しよう
「であります」と「でございます」等の聞き間違いをする人、また速度はついていけるのにポッと言葉が抜けてしまう人は、朗読者の朗読に合わせ、他の受験者には聞こえないような小さい声を出して、または頭の中で復唱しながら速記してみましょう。そして、復唱する際、ゆっくり聞こえるように自分の頭の中で速度を置きかえましょう。
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(10)精神を集中させよう
調子よく速記することができ、「これは物になるぞ」と思っても、絶対に気を抜かないようにしましょう。気を抜いた途端、ひっかかったり、書きにくい言葉が出てきたりすることがあります。
また、書けなくても乱れても、最後まで一生懸命頑張りましょう。朗読者の息継ぎで追いつけることもあります。また、朗読の最中、速記文字が乱れて反訳できそうもないなと思ったり、大幅に抜けたと思っていても、いざ反訳してみると、ひっかかった箇所が意外と頭に残っていたり、抜けた箇所も字数にしてみれば案外少なかったりすることもあります。
たった5分、たった10分、気合いを入れて頑張ろう。
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(11)空読みは場合により書かないでおこう<
本番前の空読みは、絶対書かなければならないものではありません。空読みで抜けそうになったり、また抜けて自信をなくすようなら、むしろ書かない方がよいでしょう。また、空読みで緊張した後、さらに「これから本番です」の言葉で再び心臓が高鳴る人は、空読みがなかったものとみなして、すぐ本番に入ってみてはどうでしょうか。2回連続の緊張が1回の緊張で済みます。
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5.本番での反訳
(1)朗読が終わるとすぐにチェックしよう
朗読が終わると気が緩むためか、いざ反訳してみると最後の部分が読めないことがよくあります。朗読が終わると、すぐにその部分を原文帳に訳しておきましょう。また、速記している最中につけておいた要注意等のチェック箇所や、原文帳をパラパラめくって、乱れている箇所、書き間違っている箇所も訳しておきましょう。でも、それに余り時間をかけ過ぎないように。
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(2)早目に反訳を終えよう
読めない箇所に出くわしても、そこで余り時間をとらずに、さっさと次に進みましょう。後の方でわからなかった速記文字が出てきたり、またそのヒントを与えてくれることもあります。そして、なるべく早く反訳を終え、見直しや穴があいたところをじっくり考える時間的余裕をつくるようにしましょう。
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(3)文意をつかんで反訳しよう
速記文字は、文章の流れというものを頭に入れて反訳しましょう。1つ1つの速記文字を見て訳すと、凝り固まってほかの読み方ができなくなります。
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(4)勢いに乗ろう
反訳には「勢い」というものがあって、その勢いに乗ると読めそうにない箇所も何なく読めたりすることがあります。逆につまずいてばかりいると、きれいに書いている速記文字さえも読めなくなります。神経を集中して、勢いに乗って反訳しましょう。
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(5)ミスの字数を少なくしよう
速記文字が乱れ、その文字が複数の言葉に訳せる場合は、どちらにすればミスの字数が少なくなるかよく考え、ミスの少ない方で訳しましょう。
例えば、「また」と「今」で迷い、「今」と反訳して正解が「また」だった場合、ミスは2字になりますが、逆に「また」と書いて「今」が正解だった場合はミス1となります。こういうのは、文章の前後をよく読み返すと、その流れから正解が得られることもあります。
なお、ごくたまに朗読者が読み誤る場合があり、意味がつながらないこともありますが、その箇所はミスの対象にはなりません。
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(6)「標準用字用例辞典」を活用しよう
平成30年より全級で辞書が使用できるようになりましたので、「標準用字用例辞典」(日本速記協会発行)を大いに活用しましょう。この辞典には用例も掲載されているので、四字熟語、複合語等、ヒントを得られることもあります。
辞書を使用する時間がない受験者は、漢字書きか平仮名書きか迷ったときは、漢字書きにしておきましょう。「社会的慣用のあるもの」失点とはなりません。ただし、全くの当て字や間違った漢字はミスになります。
採点基準については、「速記技能検定試験要領」を参照してください。
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(7)見直しは必ずしよう
反訳し終わった後は、もう一度原文帳と反訳原稿を照合して見直しをしましょう。読み違いや読み落としを見つけたり、あるいは読めなくて穴があいている部分を埋めることもできます。穴埋めばかりに時間をとるより、速記文字を正確に訳しているかどうか確認することの方が得策です。そのためにできるだけ早く訳し終え、見直しの時間を十分とるようにしましょう。
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(8)見直しは反訳のときと反対の方法でしよう
見直しは、速記文字を固まり単位で反訳した場合、今度は1字1字追って点検しましょう。また、速記文字1字1字の線を追って反訳した場合は、固まり単位で見直しましょう。
なお、見直す際には、必ず原文帳を見た後、反訳原稿を見るようにしましょう。逆にすると間違いが見つかりにくくなります。
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(9)時間に余裕があれば反訳原稿を読み返そう
見直しが終わって穴も埋まり、それでもまだ反訳終了時間まで余裕があるときは、原文帳は横に置いて、反訳原稿のみをさっと読み返してみましょう。字の脱落、書き間違いだけでなく、文章の流れがわかりますので反訳間違いも見つけることができます。
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(10)読めない速記文字はいろいろな角度から見よう
読めない速記文字に対しては、いろいろな角度から検討してみましょう。また、速記文字ばかりに気をとられず、前後の文章を読み返して、多分こういったたぐいの言葉が来るのではなかろうかと推測してみましょう。
〔ヒント〕
ア 文字の長さを長くしたり短くしたりする
イ 直線にしたり曲線にしたりする
ウ 線を寝かせたり立てたり、方向を変えてみる
エ 長音、濁音、長濁音等にしてみる
オ 正円を楕円に、楕円を正円に、また小円を大円に、大円を小円にしたりしてみる
カ ほかにも読み方がないか考える
キ 同行省略、重音省略等してないか考える
ク 運筆上、余分な線が出たり、また消えたりしていないか考える
ケ 線が重なっていないか考える
コ 上段・中段・下段に置きかえてみる
サ 書き損なっている場合もあるので、ある1つの線から推測する
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(11)穴を埋めておこう
運悪く速記の段階で抜けて原稿に穴があいた場合、何かの言葉を埋めておくという方法があります。たとえそれが間違っていてもダメもとということで、例えば助詞等を入れたり、文章の筋からするとこういう言葉が来るのではないかと思われる言葉、また前後の文章の中で出てきた言葉などを入れておきましょう。ただし、違う箇所に入れ込んだり、字数を多く入れ過ぎないように。
こういうテクニックは、実務では必要です。
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(12)反訳原稿はきれいにしよう
反訳に当たっては、なるべく丁寧な字で書きましょう。また、文章をよく考えて句読点の打ち方にも十分注意を払い、改行をすべきところは改行しましょう。また、消しゴムのかすが残っていないか、消しゴムで消した後が残っていないか、さらに反訳段階であやふやな箇所等に入れていた印の消し漏れがないか点検して、反訳原稿そのものをきれいにしておきましょう。成績がよくて賞の対象となり同じミス数の人が何人かいる場合、句読点や改行の処理方法等によって決定されます。
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6.試験を終えて
(1)解答書と突き合わせをしよう
試験が終われば必ず解答書を買い(またはもらい)、原文帳と見比べて、ミスの数、内容を調べておきましょう。そうしないと、通知が来るまでの1カ月間、結果が気がかりでしょうし、不幸にして不合格の通知が来ると大変がっかりすると思います。その上、今後の対応策としてミスを分析するときに非常に有効で、貴重な資料となります。
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(2)原文帳と解答書は残しておこう
検定試験の原文帳には、そのときの自分のレベル、心理状態、今後の対応策等、いろいろなものが詰まっています。解答書とともにつづっておけば後で非常に役に立ちますので、捨てずに残しておきましょう。
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(3)できるだけ受験しよう
調子が余りよくなくても、できるだけ受験しましょう。その回によって試験問題が比較的易しかったり、また自分の得意な分野の問題が出題することもあるかもしれません。また、受験回数を重ねることによってアガリが少しずつ解消されてくることもあります。
日ごろの練習を無にすることなく、「不合格でダメもと」という気持ちで数多く受験しましょう。
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